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2009年 08月 03日
読者の DAYLIGHT さんから、メーカーによって書体のデザインが違うのはなぜかという質問をいただきました。
MyFonts.com で調べたところ、 Futura という名前で手に入る書体はたくさんあります。その中から、Extra Bold のウェイトに限定して比較するだけでこんな風に違いがあります。一番上が Futura ND です。同じポイントサイズでの比較ですが、大きさにも違いがあります。 ![]() そうなったのにはいろいろ事情があって、それこそメーカーよっても書体によっても様々なケースがあるので推測の域を出ませんが、こんなふうに考えてください。 メーカーによってデジタル化の次期や担当者が違います。版権を持っている活字会社からライセンス契約して原図(清刷)を借り受けてデジタル化したとしても、作業担当者が違えば最終的にできあがるものもとうぜん違うわけで、 Futura のように金属活字書体として80年以上前に生まれて、そのあとで写植、デジタルといろいろな手を経ていくうちにいろんなバージョンができてしまった、というふうに理解してもらえばだいたい当たりじゃないでしょうか。 書体は違いますが、数年前に似たような質問をもらってこういう調査をしたことがあります。 ご参考までに。 私のブログ ライノタイプ日本代理店のQ&A 同じような疑問を持ったデザイナー宮里さんのブログ ちなみに Futura ND は、書体の版権を持っている Bauer 社が Neufville Digital 社に委託して1999年にデジタル化したものです。通貨単位ユーロの形に特徴があります。 ![]() 他の各社との比較も、このユーロの形でみていくとはっきり違いがわかると思います。ご自分で仕事に使うときは、使いそうな字のデザインを比較して一番イメージが合うものを選ぶ、というのも書体選びの方法です。 2009年 06月 05日
休暇で、フランスのストラスブールに行ってきました。この街は、 欧州議会・欧州人権裁判所が置かれていることでも知られています。
最近新しくなったストラスブール駅。旧駅舎をすっぽりガラスのドームで覆ってあります。この、いわばストラスブールの玄関でお出迎えするのが Futura。 ![]() ![]() 泊まったホテルは、 欧州議会やコンベンションセンターに近い Holiday Innでした。ここのパンフレットや案内、備品などはすべて Futura。 ![]() ![]() ホテルにはユダヤ人も泊まっていました。ホテル内のプールで見たんですが、ひげをはやしていて、頭の上のちっちゃい帽子みたいなものを外してから泳いでました。ホテルから電車で一駅のところには大きなシナゴーグ(ユダヤの礼拝堂)もありました。 古本市をのぞいてみたら、 Futura できれいにタイトルを組まれた文庫本が。『フランスの詩の歴史』なんてタイトルも。 ![]() 近くの町でお金を引き出したときの ATM も Futura。 ![]() たとえばこんなふうに思っている人はいませんか? 「昔はタブーだったけど、いまはそんなことをいうウルサイ人がいなくなったから Futura が使われている」なんて。大戦の直前から、 Futura はフランス国鉄の書体として使われていました。これを見ても分かります。 2009年 01月 18日
雑誌『デザインの現場』に「書体 Futura は欧米やイスラエルで普通に使われている」という記事を書いたのが2004年10月号です。それまで日本だけで聞かれた「Futura はナチスのイメージがあるので使用に注意」という噂はオカシイよ、と声を上げてからもうすぐ5年ですが、その噂はいいかげん消えつつあるんでしょうか、それともまだ深く残っているんでしょうか。『デザインの現場』2004年10月号が今は手に入りにくくなっていると思うので、その噂についてそのときインタビューした世界各地のタイポグラフィ界の方たちの意見をここでも紹介します。
なお、雑誌の記事にしたときには字数の制限があって短くせざるをえなかった意見もありましたが、ここではそれより長く載せます。インタビュー転載については『デザインの現場』の了解を得ました。この場を借りて感謝いたします。 スティーブン・ヘラー氏 (Steven Heller:米国ニューヨークに住むアートディレクター。デザイン教育、タイポグラフィ教育に関する本など多数の著作あり。ナチスのシンボルについて分析した 『The Swastika』も彼の最近の著書) 「フツラは決して、決して、決してナチスの書体ではないと断定する。ナチスよりも前につくられ、他のモダニズム同様ナチスによって拒絶された書体なのです。」 クリストファー・バーク氏 (Christopher Burke:英国の書体デザイナー、研究家。Futura 書体をつくったパウル・レナーの生涯をまとめた 『Paul Renner』 の著者) 「びっくりしました。ナチス書体というものがあるとすれば、その正反対に位置するのが Futura です。Renner は頑固な反ナチで、Futura の設計をはじめたのはナチスが勢力を拡大するずっと前だから、ナチスの書体だというのはおかしい。Renner は当時書いた本のなかでナチの文化政策や事実無根のユダヤ人弾圧を批判しています。もしナチと関係のある書体があるとすれば、それはプロパガンダに頻繁に使われたブラックレター書体だと思いますが、その書体デザイナーもナチ党員ではありませんでした。書体に政治的意味合いが付随することはあり得ません。ブラックレター書体でさえも、第三帝国以前のドイツや他の国で長い歴史を持っていることを考えるとナチの書体とは言えないのです。これを雑誌に書くときに、私の著書を引き合いに出してください。お願いです。数年前から事実が提示されているにもかかわらず、そのような発想が出てくることは痛切の極みです。まだ私の著書を読んでくれる人の数が充分でないのでしょうか。」 ヤン・ミデンドープ氏 (Jan Middendorp:オランダ生まれ、現在ドイツに住む。 タイポグラフィ関係の著作 多し) 「幾何学的サンセリフ体がファシストの書体って、そりゃおかしな話だ。例えば、赤と黒の組み合わせはナチスの色だと言ったり、ある山がナチス崇拝のさいに使われたから、それはナチスの風景だと言ったりするみたいなことだよね。ナチスが Futura をそんなにたくさん使ったとも思わない。使ったとしたらブラックレターのほうだろう。それもその後で『ユダヤの書体』ってことにされちゃってナチスは DIN みたいなのを使った。 『フォルクスワーゲンはナチの車だ』と言うほうがまだ筋が通っているかもしれないけど、それだって人騒がせ目当ての子供っぽい理屈にすぎないよ。」 ヤネック・ヨンテフ氏 (Yanek Iontef:ATypI 国際タイポグラフィ協会イスラエル代表) 「そんなナンセンスな話は初めて聞きました。Futura はどちらかというとナチスの反対のイメージで、30年代のイスラエルでもよく使われて、Futura と合わせるためのヘブライ語書体 Aharony が1934年につくられたほどの人気でした。まったく滑稽な話です。ここイスラエルでは Futura は今も人気の書体です。普通のイスラエル人は Futura と他のサンセリフとを見分けられないし、私個人は Futura をナチスの文字とは思いません。」 ![]() 彼はまた、 イスラエルの街角や雑誌などで見かけた Futura の写真 も送ってくれています。 Futura はナチスの勢力拡大の前から広く使われていた書体ですから、30年代にドイツ中の印刷屋から Futura が消えたわけではありません。ナチスが Futura を用いたことがないとは言えませんし、それを嫌悪する人がいないと断定はできませんが、欧米やイスラエルのプロフェッショナルの持つイメージはナチスと正反対のようです。 2009年 01月 17日
フォルクスワーゲンが Futura に似ている書体を使用していることについて、こういうコメントを以前いただきました。
「フォルクスワーゲンにはナチスの政治戦略的歴史もあるので、中途半端に知ってしまうと「あぁ~フォルクスワーゲンもFutura使ってるしね~」ということになるのかもしれませんね…」 この「中途半端」、というのがやっかいですね。そんなふうに思った人、いいですか、もう一歩深く考えてみましょう。かりにある企業や製品に「ナチスのイメージ」があるとしたら、はたしてそれを大事にすることが世界のブランドにとって得かどうか...。 実際、ドイツでは「ナチスのイメージ」をシャレか何かで簡単に見せることはできないんですよ。ナチスのシンボル鈎十字(ハーケンクロイツ)を公共の場で見せることは法律に違反します。ドレスデンの交通博物館でも、ジンスハイムにある別の技術博物館でも鈎十字の消された第二次大戦当時の時刻表や軍用車両を見ました。こんなふうです。これはジンスハイム技術博物館で撮りました。鷲の下にある丸の中に本当は鈎十字があったはずです。 ![]() あと、玩具店で日本製のプラモデルが売られているのを見たことがありますが、ドイツ軍戦車のパッケージの絵のうち鈎十字の部分が黒のマーカーで塗りつぶされてました。うちの会社の規定では、ホームページをナチスの関係とリンクすることを禁じています。他の会社も同様だと思います。 ドイツの企業あるいはドイツ人の一般的なナチスに対しての認識が、イスラエルよりも甘いということはないですね。 2009年 01月 17日
私の友人が「Futura の噂話を検証する」と題した記事を雑誌『d/SIGN』 no.16 (2008 8月発行)に投稿しました。
こちら から記事のPDFがダウンロードできます。
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