8月9日は Futura 書体を設計したパウル・レナーの誕生日です(1878年8月9日生まれ、1956年4月25日死去)。Futura で組まれた本3冊を紹介します。
パウル・レナーの生誕125年にあたる2003年にレナーの出身地 Wernigerode の博物館では回顧展が開かれました。これはその展覧会の小冊子。
デジタルの ND Futura で組まれています。オールドスタイル数字(小文字に揃う数字)とスモールキャップ(小さい大文字)とを使った本文組は意外に読みやすく、これを見るまでは ND Futura はあんまり良くないと思っていたのですが、すっかり見直しました。ちなみにこの小冊子はこれの組版をしたデザイナーにたまたま知り合って、送ってもらったものです。
同じ2003年に、パウル・レナー著『Kulturbolschwismus?』(1932年発行)のリプリント版が出ています。当時の活版刷りの本の複写です。表紙の太い角張った書体は Futura Display です。
内容は難しくて私程度のドイツ語力だと理解できないところも多いんですが、この本でレナーはナチスのユダヤ人狩りを強く批判して、現代美術界へのユダヤ人の貢献は計り知れないと書いています。この本が出版された翌年の1933年3月5日にはナチスは政権を取り、レナーは3月25日にナチスによって家宅捜索を受けて、4月4日に逮捕されます。
さらにパウル・レナー著『Kunst der Typographie』もリプリント版が出ています。タイポグラフィの解説をした、わりと地味で専門的な本です。